carpediem

『あなたの人生を記録する』

MENU

自国産業を守る「エビのお医者さん」 ガン・コンチャン(27)


f:id:blogcarpediem:20210407165332j:image


 「微笑みの国」タイでエビの養殖業者に薬品や備品を販売しているKan Kongchanさん。(ガンコンチャン。以下、ガン)彼との出会いは大学時代。5年前にはタイ、バンコクに3泊4日のひとり旅をした際にアテンドしてくれた。

 

 現在は彼の父が創業し30年が経過した「グリーン・インター株式会社」の2代目として仕事をしている。

 

 今回、初のオンラインインタビューとなった。

 

――今日はよろしくお願いします!(笑)。高校入学と同時に日本での生活を始めたけれど、そもそも日本の興味はいつ頃からあったの?

 

ガン 9歳の頃かな?毎週土日はドラえもん、ポケモン、名探偵コナンを欠かさず見てたよ(笑)。今もアニメは好きで鬼滅の刃はアニメはもちろん、漫画も読んでる!

 

 それと日本人の考え方にも興味があった。例えば、タイは魚を丸焼きにして食べることがほとんど。でも、日本人は刺身や煮つけにする。1匹の魚からすごい価値を生み出せるんだよね。「一体、どんな国なんだろうな?」って思っていた。

 

 

――1匹の魚からそこまでのことを考えられるなんて…!高校は山梨県にある日本航空高等学校(普通科)へ進学。カルチャーショックとかはあった?

 

ガン 当時学校の寮生活で一番驚いたのはお風呂!日本はみんなで一緒にお風呂入るのが普通じゃん?タイではありえないから最初は全然慣れなくて(笑)。

 

 そんな疑問を日本人の先生に聞いたら「洋服を着てない、つまり皆平等な立場。だからこそ、お風呂では色んな話ができる場所なんだよ」と言われてから、感動してお風呂が好きになった!

 

f:id:blogcarpediem:20210407171839j:plain

 

 

――その後、東京国際大学、国際関係学部に進学。改めてどんな4年間だった?

 

ガン 同大学に通っていた先輩からのお勧めだった!多国籍の生徒が多くて面白いなと思ったんだよね。

 

 4年間はとにかく良い成績を残すことと、とにかくアルバイトをしていたね。寮生活ではないし、タイよりも物価が高いからね。週6日で働いていたかな?若いから頑張れたよね(笑)

 

 友達の支えがあって無事に大学卒業できたと思う(笑) 

 

――大学卒業後はタイに戻り、三菱電機FAに入社。すぐにお父さんの会社で働こうとは思わなかったの?

 

ガン それは考えたんだけど、父から「社会人経験をまず積んでからにしなさい」と言われた。そこで、ご縁があって「三菱FA」から採用を頂いた。職場環境も良く、若者が多くてチャレンジ精神に溢れていた。

 

 当時はマーケティング業務がメイン。日系工場の生産システムの自動化と機械内部の部品の販売もしていた。一昔前までは最低賃金も低かったけど、今や都市部や大手企業は様変わりしているよ。

 

――同社で3年間の勤務を経て、お父様が経営する「グリーン・インター株式会社」2代目のキャリアをスタート。ガンが住んでいる地域はエビ養殖は盛んなの?

 

ガン 僕が住んでいる町では約70%のひとたちがエビの養殖事業をしている。グーグルマップで見ると穴だらけ。それはエビ養殖している池を表しているんだ。

 

 主な輸出国はアメリカ50%、日・中50%って感じかな。他にエビの主要輸出国のインドや中国があるんだけど、コロナの影響でアメリカへの冷凍食品の輸出が規制中。だから、販売ルートがタイへ移動して需要が一気に増してる。

  

 最初にエビを養殖池に入れるときは米粒サイズなんだけど、2か月で人差し指ぐらいの大きさになる。すごいでしょ?(笑)

 

f:id:blogcarpediem:20210407151009j:plain
f:id:blogcarpediem:20210407151007j:plain

 

――今年で入社から5年が経過。現在は4店舗目の支店長と聞いたけど、どういった仕事内容なの?

 

ガン 実はエビは海の生物の中でもすごい臆病な生き物。少しの音、気候の変化で病気になりやすい。きめ細かな管理、環境づくりが不可欠。

 

 従業員はすべてで約20名で僕らが行っているのは養殖事業者さんに対して、化学薬品・備品(微生物、餌)などの販売だよ。

 

 まず行うのは実態の把握。どんなプランクトンが養殖池に生息しているのかを知り、お客さんと一緒に問題を検出して共有することから始まる。

 

 そして、環境に適した薬品を提供。その他、エビの成長に必要なミネラルやカルシウム、アミノ酸を日々のデータから組みとって提供している。

 

 一言で言うと「エビのお医者さん」だね(笑)

 

f:id:blogcarpediem:20210407151017j:plain

 

 

――実際に販売に至るまでは、試行錯誤の連続だろうね…。ガンの仕事は無くてはならない存在と言えるね。

 

ガン 僕が住んでいる町は決して裕福とは言えない。それでいて、エビの養殖事業はハイリスク・ハイリターン。初期投資の金額は高い分、利益率も高い。ただ、2,3回赤字が出れば途端に倒産へ追い込まれる。

 

 ほとんどの事業者が「家族の命」をエビの池に賭けてる。

 

 その中で大事なのは、いかに低コストで高い利益を出してあげるか。緻密な分析と提供する薬品の見極めが重要。お客さんがより多くの利益を得られることで、自社が長く経営できると信じている。

 

f:id:blogcarpediem:20210407151004j:plain

 

――「生活がかかった仕事」だからこそ、その喜びも大きいそうだね!さいごにこの先の目標を聞かせてくれるかな?

 

ガン 今の仕事はすごい楽しい!毎日いろんな問題がある。決して同じじゃないからこその楽しさがある。

 

 この先はさっきも言ったけど、まずはお客さんの利益の確保と事業が継続できるようにすること。そして、自社の経営も保つこと。実は最近結婚をして…!将来的には、自分の子どもに継がせたいって夢も持っている。

 

 あとは毎年1、2回は日本に旅行に行きたい。やっぱ俺にとって第2のホームだからね。 

 

(写真:本人提供)

(取材/文/構成/:高橋郁弥)

 

 

f:id:blogcarpediem:20210302094228j:plain

 

f:id:blogcarpediem:20211015223507j:plain