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学校に通えない子どもと、自分を責めてしまうお母さんへのアート体験――ボタニーペインティングが持つ可能性 石川結香

 

 3人のお子さんを育てながら、ボタニーペインティング講師を勤める石川結香(いしかわゆか)さん。

 

 石川さんが運営するミチカケ・ミチル堂は埼玉県入間市に位置し、次女のくくなさんと二人三脚でアート制作、ワークショップ、イベントに参加するなど多岐に渡る。

 

 ボタニーペインティングは乾燥した蓮の葉に自身の好きな色を塗っていく。何かを見本にしないため、”正解のないアート”と言われている。

 

 『”社会のルールや常識に疲れているお母さん。学校に馴じめず苦労している子どもが多いと思うんです。そうした親子さんに少しの時間、リフレッシュしてほしいんです」

 

絵を描く少女の悩み

――本日はよろしくお願い致します。蓮の葉に色を塗るボタニーペインティング。幼少期から絵を書く事が好きだったのでしょうか?

 

石川 紙とペンを持って出かける子どもでした。ぬり絵をしたり、女の子を描いたり。小学生の頃はファッションデザイナーに憧れていました!

 

 ただ、中学生ぐらいになると周囲の雰囲気に合わせる事に疲れ、学校そのものに違和感を覚えるようになりました。

 

 高校に入学しましたが、同様の悩みを抱え途中で退学しました…。

 

【Profile】石川結香(いしかわゆか)1979年,埼玉県入間市出身

2021年からボタニーペインティングを描き始める。自宅兼アトリエにて、ワークショップやイベントに参加。ミチカケ・ミチル堂の名前は「月の満ち欠け」から由来。

 

”好き”だけでは食べていけない世界

――そうだったんですね…。将来への不安感もあったかと思います。退学後はどのような時間を過ごされたのでしょうか?

 

石川 そんなときに救ってくれたのが絵でした。

 

 なにか『これ!』と言ったものではなく、抽象的なものをずっと描いていました。そして、できた作品に自分の気持ちを一言添える。

 

 母もそれを止めることなく、見守ってくれていました。

 

 その後、美術の専門学校へ進学し、彫刻、粘土、油絵と幅広く学び、美術大学に進学しました。

 

 華やかな世界ではありながら、生計を立てていくのは一握りの世界でもあります。生活していく為にも、就職しました。

 

子育てと仕事が重なる

――後に結婚し、退職。子育てが始まりました。その間、消しゴムハンコの制作、販売も行っていたとお聞きしました。

 

石川 路面やネット販売を中心に行っていました。最初は自分が描いた絵を購入して頂ける楽しさがあり、次第にご依頼を頂き制作するようになりました。

 

 その一方で、お客様のご要望を反映することも増えてきました。次第に自分の絵とは離れていく寂しさを覚えました。

 

 また、子育てをしていると、ひとりひとり持っている性格も違えば、周りの子ができることが自分の子供はできない。

 

 そうした物事の「良い悪い」といった価値判断を要する時間も増え、仕事と子育てが重なり、今は一旦お休みしている状況です。収入と自分のやりたいことのバランスは難しいですよね。

 

石川さんが制作した消しゴムハンコ

 

正解の無いアート!?

――子育てに追われる中で出会ったのがボタニーペインティングですね。その時のいきさつや心境はどういったものでしたか?

 

石川 当時の私は『物事はすべて〇か✕しかない!』と世の中には二者択一しかないと思って過ごしていました。子育てに夢中で絵を描くことさえも忘れていました。

 

 そんなある日、インスタの広告で『正解のないアート』という言葉が目に入りました。『正解の無い事なんてある?』といった心境でした(笑)

 

 疑問を抱きながらも、自分を表現できることを見つけたいと思い通信講座から始めました。

 

 子育ても自分のためですけど、少しの時間を自分に充ててもいいんじゃないかなって思ったんです。

 

「蓮の葉の香りが好きです。自分との対話じゃないけど、どの色を選び、どこに塗るのか。全部自分で決めることができるのも魅力です」

 

学べる環境は選べる

――現在は次女のくくなさんと一緒に活動をされています。様々な要因で学校に通われていないとのことですね。

 

石川 「学校に行けないから」という考え方もありますけど私たちは「学校に行かないからやれることもある」と思っています。

 

 お店をオープンして1年が経過しました。『子どももいるし…』と、迷いを抱きながら作品制作に加え、ワークショップや展示会にも参加。

 

 多様な人たちと交流したことで私も娘もふさぎ込んだ気持ちが上向いているような気がしています。

 

 はじめは子どものパーソナリティをSNS等に書くことにためらいがありました。それでも、同じ境遇で悩む人たちに私たちのことを知って欲しかった。

 

 また、そういうお母さんでもボタニーペインティング講師にもなれるということも伝えたかったんです。

 

「ある日、『私の子も学校に行けなくて…』とインスタからメッセージが来て、ワークショップにご参加頂きました。現在の不安や将来の悩みをお聞きしました。自分から勇気をもって行動すれば、誰かが来てくれること実感しました」



見た目だけじゃわからない

 

――コロナ禍も相まって、学校に通えない児童が多いと報道を見たことがあります。

 

石川 きっと通っている子の中にも表情に出ず、声に出せず埋もれてしまっている子もいると思うんです。

 

 「なんで学校に行かないの?」と、不思議に思う方もたしかにいます。ここ数年、自分自身を責めても来ました。

 

 本人は忘れているかと思いますが、ある時から彼女の作品がどれも黒い絵ばかりの時期がありました。

 

 これは彼女なりのSOSだなと察し、学校に行かないことを選択しました。それ以降は、私と一緒にアートワークを通じて徐々に回復してきました。

 

 学校に行けない子たちも『学校行かなくていいのかな…』と、気に掛けています。その気持ちも大事だけど、『悪いことをしているわけじゃない。今はゆっくり休んでも大丈夫。もしも、学校に行きたくなったらいつでも行っていいんだよ』と、伝えてあげたいです。

 


www.youtube.com

『ミチカケ・ミチル堂』PR動画

 

さいご

――決して、”教える”ことが目的ではなく、親子にとっての場所。その間を取り持つのがボタニーペインティングというように感じました。

 

石川 一緒に作品を作る中で、同じ境遇だからこそ、話せる内容もあると思うんです。

 

 なので、平日の学校がある時間帯にワークショップを開催していますし、お子さんを連れての参加もお受けしております。

 

 『なにかしなきゃ』と誰にも相談せずに思いつめるお母さんもいると思うんです。

 

 私自身、周囲の目を気にしてきました。ただ、ワークショップを通してコミュニケーションを取り、少しづつ変わっていく次女の姿を見て元気をもらえました。

 

 大人も子どももそれぞれ違う個性がある。その人にしかない繊細さをボタニーペインティングでも感じて頂けたらと思います。

 



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