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「酒蔵だけど、酒蔵じゃない」――飯能の自然と生物多様性と共に歩む 「やまね酒造株式会社」若林福成

 

 都内から電車で約1時間。埼玉県飯能市にある「やまね酒造株式会社」。同社はクラフトサケ(米、米麹、水、発芽玄米を発酵させてできたお酒)の製造販売をメインに”酒造り学校”や”民泊”サービスを手掛けている。

 

 「飯能市でお酒づくり…?」そう思う読者もいるかも知れませんが、代表の若林福成(わかばやしふくなり)さんはこう語る。

 

 「飯能市を選んだ最大の理由は”自然の豊かさ”。ここにつきます。社名の由来となった二ホンヤマネが生息しているなど、古来から存在する動植物の営みが脈々と受け継がれた土地なんです」

 

 日本の伝統的な食文化のひとつであるお酒。どのような想いで会社を立ち上げたのかをお聞きしました――。



理科教諭の夢から10代で起業家の道へ

――本日はよろしくお願いいたします。若林さんは19歳から起業されるなど、非常に稀なご経歴をお持ちですが、どんな子供時代を過ごされたのでしょうか?

 

若林 父は公務員で母は主婦。ごく一般的な家庭に生まれ育ったと言えます。ただ、身内に会社経営者はおりませんので、親族内では異端児だったかもしれません(笑)

 

 子どもの時からとにかく生き物が大好きでした。田んぼや森、川といったところに足しげく通いました。また、博物館に行き、動植物の研究をされている先生の話を聞いたり。動物たちの命の鼓動や営みに触れることで私自身、得ることが大きかったですね。

 

 「将来は理科の先生になりたい」という夢があったので、実は大学生時代に教員免許を取得しました。

 

【profile】若林福成(わかばやしふくなり)1991年3月生まれ埼玉県久喜市出身。

幼少期の頃から動植物が大好き。高校生の時に地元の酒店、洋品店の人達と働き、町おこしを行う。大学2年生の時に「合同会社福成」を立ち上げる。2019年12月「やまね酒造株式会社」を設立。クラフトサケ製造をメインに、酒造り体験、宿泊サービスも手掛ける。

 

 

”親父さん”との出会い

――教員を目指しながらも、現在はクラフトサケの製造販売会社の経営者…(笑)。どういったいきさつがあったのでしょうか?

 

若林 高校生時代に、「地域を盛り上げたい」と思い、自ら企画・立案をし役所に提案をさせて頂いたことがありました。

 

 『まずは地域の人達と一緒にやってみたらどうだい?』と助言を頂き、地元の栗橋地域(現:久喜市)で商店主、洋品屋さんの方々達と地域活性化に向けて奔走しました。

 

 特に酒店を営んでいた井上武利(いのうえたけとし)氏との出会いが今の私を形成しました。日本酒、言い換えれば地酒とも言います。その土地で作られたお米や水。自然環境に左右されてひとつのお酒が誕生する。そうした様子を間近で学び感銘を受けました。

 

 次第に『いちプレーヤーとして、地域商店の方たちと肩を並べて地域を良くしていきたい』という想いにかられ、大学2年生のときに1社目である「合同会社福成」を立ち上げ、起業家としてスタートしました。

 

「私の事を孫同然として、親しみを持て接して頂きました」

 

日本酒×アニメ

――当時はどういったサービスを手掛けられていたのでしょうか?

 

若林 キャラクターコンテンツを活用した、町おこしをプロデュースしておりました。日本のアニメは海外からの人気も高い。

 

 ”萌え”、”クールジャパン”といったワードが一声風靡した時代背景も相まって、国内外問わず様々な方の居場所づくりをさせて頂きましたね。

 

 また、日本の素晴らしさを伝えるのにお酒は非常に有効なツール。聖地巡礼(アニメで縁のあるスポットを訪れる事)などでインバウンドで訪れた方たちに、その土地の地酒を味わえる体験をご提供できれば。と、この頃から構想していました。

 

©しろ/アース・スターエンターテイメント/『ヤマノススメNext Sumit』製作委員会

 

自然と人が共存した町

――秋田県での修業を経て、令和元年12月に「やまね酒造株式会社」を立ち上げられました。日本酒=米どころと一般的には考えてしまいます。なぜ飯能市だったのでしょうか?

 

若林 動植物、自然の豊かさ。ここにつきますね。

 

 東京からアクセスしやすいにも関わらず、哺乳類だけでも約30種類以上が飯能市内に生息しています。

 

 そして、当社はこの土地のものをすべて凝縮させるようなお酒づくりをしております。飯能産の西川材を使用した木桶仕込みの製造。現在、本製造方法のお酒の製造量はかなり少ないんです。言い換えれば絶滅寸前な状況であると言えます。

 

 この木桶の管理は非常に手間がかかります。熱湯殺菌に加え、天気がいい日は木桶を外に出して、常時太陽光が木桶の底に当たるように移動させる。まさに自然と共になんです。

 

 

「木桶の繊維の中には無数の微生物が住み着いており、彼らが作っているんです。そうした生き物たちの繋がりが多ければ多いほど、私は豊かで素晴らしいお酒ができるって僕は信じているんです」

 

蔵人体験

――御社はお酒の製造販売のみならず、民泊などのサービスも行っていらっしゃるそうですね?

 

若林 宿泊者の方が蔵人(酒蔵で酒造りをする人のこと)が住む家に宿泊することにより、宿泊者本人が蔵人になったかのような気持ちで、時間を過ごすことができる「やまね蔵人の宿」。

 

 それと並行し、「やまね酒造り学校」プロジェクトを昨年から指導させていただきました。こちらは『日本の伝統的な酒造りを海外の方にも体験して頂きたい』という想いから始まりました。酒造り体験のほかに、麴づくり体験など1時間の蔵人体験コースがございます。

 


www.youtube.com

 

豊かな自然を次世代に引き継ぐ

――酒造所と聞くと堅いイメージがありますが、時代のニーズに合わせながら多岐に渡るサービスを展開されています。御社の企業理念をお聞かせください。

 

若林 「酒蔵だけど、酒蔵じゃない」と、よく皆さまにお伝えしています。「飯能の自然と生物多様性と共に歩む環境保全の会社」である。ここを大事にしていきたいと思っております。

 

 二ホンヤマネは樹上性の生き物、森や木に深く関係する動物なんですね。

 

 そして、当社で使用しております木桶は樹齢110年から120年の木を伐採させて頂いております。そうした貴重な材を確保するためには豊かな環境を維持し、保全していかなければ成り立たないんです。

 

 二ホンヤマネを守ることがその土地の森を守ること。そして、動植物を守ることによって、最終的には我々人間も守られる。すべて繋がって行く。循環なんですね。

 

「二ホンヤマネという生き物の名前が由来となっています。この動物は哺乳類の中でも最古参。”生きた化石”と呼ばれる事もあります」

 

さいご

――豊かな自然があってこそのお酒づくり。一朝一夕で完成するものではないんですね。創業から3年が経過致しました。今後はどのような展開をされていくのでしょうか?

 

若林 この度、2月7日(火)から『Makuake』にて、クラウドファンディングを立ち上げさせて頂きました。

 

 飯能市の田辺茶園様のご協力も頂きまして、日本茶を使用したクラフトサケの製造販売に取り掛かりました。

 

 二ホンヤマネのような小さな一歩一歩なんですが、その歩みを進ませて頂いています。

 

 

 

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