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テレビへの憧れを抱き、舞台俳優をしている友人 吉野成(26)ごみ回収/舞台俳優


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■私がはじめて知り合った関西人

 大学入学時のパソコン室のオリエンテーションの時に、はじめて会話。以降、キャンパスで会えば話、学年が上がると同時に授業や校内で会う機会は減ってしまったが、仲は良かった。

 卒業する時は、彼がその先の進路をどうするのかを知らなかったが、卒業して時間が経ち、大学の友人から舞台俳優をやってると聞いた。

 彼の舞台を始めて見たのは今から3年ほど前。その後も何本か舞台に出演している。今は早朝のゴミの収集車に乗りながら、舞台と稽古の日々だ。

 

■とにかくテレビに出たいと思っていた幼少期

 出身は兵庫県。幼少期からタレントになりたかった。「小さいころから思ってたけど、恥ずかしてまわりに言えなかった。」高校卒業間近になっても、テレビの世界への夢は消えず、大学進学と芝居をしたいと思い上京した。大学に通いながら俳優の養成所にも通っていた。
 大学卒業後は居酒屋でアルバイト、派遣を2年。その傍ら舞台も出演している。初の舞台は今から3年ほど前で、計4本出演している。

 インタビューしたのは5月下旬で春の公演が終わり、ちょうど一段落した時だった。

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■所属する劇団と舞台について

 劇団に所属し、舞台は春5月と秋の10月の年2本。劇団員は5人程から構成されている。舞台本番までの日程は、まず場所と公演日を決める。予算を組み、劇団員で演目の台本を探し、必要な人数を決める。そこには音響さんや照明さんも含まれる。その後チラシを作製し、稽古に入る。本読みから立ち読みとなり、平日は毎日稽古。そうして本番だ。

  1作目の作品には両親にだけ声をかけた。2作目は第二次世界大戦時の日本兵の役。人間魚雷に乗り込み相手の軍艦を駆逐するため、ふるさとの家族を思い、ほかの隊員たちを励ましながら、命を落とす役柄だった。その時は友人たちに声をかけた。「練習が本当にきつかった。だからこそ見てほしいと思い声をかけた。」

 友人たちに対する思いもある。「舞台とか、なにか集まる場みたいなのがないと中々会う機会がない。折角仲良くなったのに、会わないからと言って、仲悪いみたいな感じになるのが嫌。それはもったいない。」自分が舞台に出演することで、皆が再度交流できる場にもなれたらと思っているように感じた。

 

■続けていくための覚悟と準備

 舞台だけで食べていくのは困難。団員の中にも、 「子供が産まれて休んだり、家族を養えていけないから休団する人もいる。大きい劇団じゃないと生活は厳しい。」所属する劇団、活動頻度、演技の実力、運。様々な理由によって開花するかしぼんでいくのか左右される。

 「もちろん、先のことは不安はある。でも、実際に舞台だけで生活できている人たちがいる。その人たちが劇団に来て直接演技指導など多くのことを教えてくれる。だからこそ、全て自分がやっていくしかない。ひとつ決めたら、絶対これでいくんだ!という気構えが必要な気がする。続けるか、辞めるのか。状況や年齢で辞めざるおえないこともあるかも知れなけど、続けられるように違う場所でも準備をするしかない。」

 時間を消費せずに、これと決めたらそこに集中する。舞台は遅咲きの人も多く、40代、50代で脚光を浴び、テレビに出演している人も少なくない。そういった点でもまずは続けないと。と決めている。

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■緊張と緩和
 
劇団では舞台が組まれていないときは、ワークショップを行う。その都度やることは違うが、【緊張と緩和】をテーマにした時の話を聞いた。
 普段歩いている時、私たちはなにも意識せず歩行する。これを緩和の状態。ところが、ひとたびボールが目の前を通過すると緊張となる。誰も見ていないところで歩くのか、100人が見ている中で普通に歩けるのかでも緊張と緩和がある。例えば、テレビではスタッフさんが50人ぐらいその場で演技を見る。視線が集中している中で緊張と緩和を自分の中に落とし込み、普通に歩ける体を作っておくことが重要だという。
 「指示が細かい演出家は、マークを右足で踏んで、こっちに気配を感じて3泊待って振り向いて。という指示もある。そこを上手にできるのが演技が上手いらしいよ。そういうのをやるのが面白い。」具体的に教えてくれる。見てる人がどう感じるのかという行動を教えてくれる。

 

■厳しい稽古の先に喜びがある

 稽古中はしばしば怒らることが多い。演技や発声、歩き方など指摘が入る。「稽古中はただただしんどいよ。面白いことなんてない(笑)だけど、練習を重ねて、本番が終わり、お客さんからの拍手はグッと来る。笑ったり、泣いたり、楽しんでる所とか見れるのが舞台を続けようと思う糧になる。」

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 ■挑戦しないと怒られる
 特に演技に挑戦することを促される。「普通に読んだらそうだろうけど、この場面の流れでは違う言い方なんじゃないの?と言われる。セリフをどのように解釈して自分のものにしてるのか。を問われる。その分、自分で考え演技を挑戦したときは怒られない。」自分で考えたものをアウトプットする。惰性にならずに、常に考え行動することが求められているのだろう。

「お客さんのために挑戦しているのか。ということだと思う。お金と時間を使って見に来てくれる人たちのために、中途半端なものを見せられないと毎回思う。」

■漫画のような特殊能力は持っていない 

 業界問わず、どこか天才肌だと自分で思ってる人が多い。まれにセンスや生まれ持った天性で、チャンスや結果を掴む人もいるが、大半はそうではない。「まず、自分には天才的な能力はないことを認めることから始めた。そこから、どのようにしていくのかを学ぼうと思った。だからこそ、常に自分から動く。どの稽古も毎回毎回本気で挑まないといけない。」

 出演舞台は4本だが、1本目や2本目の作品の演技を振り返ると「徐々に知識や経験を増やしているからこそ、あの時の演技は違和感を感じるようになった。他の劇団員を見てても、会話のキャッチボールの質が受け取れるようになった。」

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■きっかけよりもやっていくうちにハマることが多い

 舞台やテレビに出たいと思っていた時はフワッとしたイメージだった。それが、大学進学で上京し、徐々に取り組むうちに演じることや、舞台にハマっていったという。「最初のはじまりはなんでも良かったりする。意気込むよりも、とりあえずはじめる。そこでやればやるほど大事なものが見つかると思う。その中でわからないことがあると勉強がしたい、向上したいと芽生える思う。」

 「人生を消費したくない。まだ、26歳と見るのか。もう、26歳と見るのかは人によって違う。だけど、まだ何にでもなれると思う。サッカー選手のような能力が重視されてしまうものでなければ、努力を惜しまなければ、なりたいものになれる可能性は充分にある。」

 

■まわりの人をハッピーに

 「みんなが楽しくしているのを見ると自分も楽しい。飲みの席でも、辛気臭いのより楽しいほうがいいし、そういう人の方が自分もまた会いたいなって思う。」つまらない人より面白い人の方に人は集まり、信頼もされる。大学時代も面白く、関西出身と一括りにするのは難しいがまわりをよく笑顔にしていた。「舞台も同じで次また見たいなと思うのは面白いのかどうかだと思う。そのためには、自分自身がまわりを笑顔にさせられる人でありたい。」 

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■さいごー彼と私の些細な共通点

 将来は映画やテレビの出演を目標としている。そのため所属する劇団で活動を続ける。より多くの作品に出演し、劇団の認知を今以上に高めていきたいと話す。そうすることで、業界にも認知され、「〇〇の演者さん良い演技するよ。」と評判が立ち、可能性がより広がるようだ。

 子供の頃からの夢を持ち続け、着々と段階を踏んでいる。急に評価され、順風満帆に進める業界ではない。お金とやりたいことの間で揺れることもあるようだが、自分のできることをし、歩んでいる。時間には限りがあるが、夢や目標を諦めるのには時間ではなく、自分の意志が一番重要だと彼から教わった。

  初めて彼の舞台を見た時に、自分がしていることを直接人に見せることがすごい。と感じた。一般的なサラリーマンは、任されたことや、義務としてやらなければいけない事が増えてくる。もちろん、その中にもやりがいはあり、重圧やプロジェクトの大きさによって大きな経験となりうる。一方、彼の場合は自分の内側の感情を100%を出して、演じ、見てもらうことが仕事。自分の活動を披露し、リアクションが見て取れる活動をしているのに感銘を受けた。

 私もこのブログで彼のように友人たちに読んでもらうことがあるが、彼のように全力で取り組み、友人・知人問わず頑張ってるなと少しでも感じてもらえるようインタビューを続けたい。