”生命の樹”なつめやしを後世に残す
なつめやしを100年、200年と未来へ続く”デーツの森”を創ろうと動き出したのは原田めぐみさん。
「現在はなつめやしの植樹活動に加え、レストランやカフェの方たちとデーツを使ったコラボもしています」
「その背景には、子どもたちに緑ある自然を残すこと、来る食糧危機に向けてなど、いろんな想いが詰まっています」
深刻化する地球環境。また特異な要素が絡み合う沖縄県だからこそ、デーツが大きな役目を担うとも話す原田さん。
なつめやしに、そして後世にかける想いとは―――。
なつめやしのチカラ
―――福岡県ご出身とのことですが、なぜ沖縄県に住むことになったのでしょうか?
大病をきっかけに2015年に沖縄県へ移住してきました。リハビリ生活の中で、改めて健康の尊さを痛感したんです。
例え回復していても、入院生活が長引くと『本当に良くなっているのかな?』って不安に思うんですよね。そして、気持ちも滅入ってしまう。
そんな時、それまで大好きだったデーツの歴史的背景を知りました。
命ととても深い関りがあること、そこに秘められたパワーに未来を感じました。
紀元前6000年~8000年も前から存在するなつめやし。イスラム教信者が行うラマダーンを終えた人たちが最初に食すのが、水と実となるデーツだそうだ。
2019年デーツフォレストプロジェクトをスタート
――2018年一般社団法人『グリーンボックス』を設立後デーツ事業部を立ち上げ。翌年には、『子どもたちに緑ある世界を残す』をテーマに、日本で初の”デーツの森プロジェクト”をスタートされましたね。
現在は苗を育てながら、植樹して頂ける方を募っています。
植樹から3年、種からだと5年〜7年経たないと実がなりませんが、一度成長すれば100年以上生き、1本の樹から7000~1万数千個の実が成るんです。
デーツの苗。現在130本が育っている。
”観光大国”そう呼ばれるも
――子どもたちに対するアプローチに加え、沖縄県の生産者を助けたいという想いもあると伺いました!
たしかに国内からの観光客やインバウンド(外国人観光客)の影響で経済も数字も右肩上がりとなっています。ですが、県民には還元されていなのが実態です。
そして、沖縄県もまた、少子高齢化の一途を辿り、担い手不足が叫ばれています。
夏場のハウス内は暑く命掛けの作業でもあります。その農作物さえも近年はホテル需要の7割近くが内地(本州)から来ている。
いくら”高付加価値”、”高品質”な商品を他県に届けても、衰退しているのが事実です。
『このまま沖縄県の第一次産業は継続できるの?』と前から危惧していました。
イエスがエルサレムに入る時に人々が、なつめやしの枝を持って迎えに来たという由来から聖なるものとされていた。
なつめやしが秘める可能性
――そんな沖縄県に新たな救いの一手になる可能性があるのでしょうか?
性質上、台風や塩害にも耐える強さを持っており、夏場の台風や豪雨が激しい沖縄県でも根強く生き続ける。
サトウキビに代わる新たな経済作物になれたらと思っています。芽を出せば、ほとんど手を掛けずに成長をします。沖縄県の大地、天候にも適しています。その性質上、台風や塩害にも耐えうる強さも持ち合わせています。
また、デーツを販売するだけではなく、飲食店でも取り入れらるなど、加工にも非常に適しています。
生産者にとっても、六次産業に繋げるのは持続的な収益を得るためにも重要な要素なんです。
沖縄UCCとコラボ企画が進行中。なつめやしの森のイメージラッピングを施し、県内の自動販売機にて発売予定。
生きた証を遺す
――SDGsの取り組みに加え、生前葬へも動き出しているそうですね!
誰しもが、生きた証、生き様は残したいじゃないですか。それを墓碑ではなく、樹木としてご提案していきます。
沖縄県の方のみならず、内地の人が旅行を兼ねてフラッと立ち寄るのも良いですよね。
このなつめやしを子どもたち、沖縄県の産業、現代を生きる人たちに向けてーーー。それらをここ沖縄県から発信していきます。
地球はもはや茹で蛙の状態
――今や世界中で地球環境が脅かされています。最後に、今一度原田さんがこの事業に抱く想いをお聞かせください!
私たちは、人類始まって以来の『なにも残せない最後のジェネレーション』と呼ばれています。
戦後日本は、高度経済成長により、文化や文明は残りました。でも、私たちの世代は生み出すことよりも、日々の生活で地球環境を脅かしています。
もはや、私たちは”茹で蛙の状態”です。
事業の想い、切り口は決してひとつじゃないんです。
私にできることは、なつめやし、デーツを残し、多くの人たちの生活を今一度豊かにすること。これが私に残されたことだと思っています。