子どもの頃の夢を叶えられなかった。そんな読者も多いだろう。
山下由都(やましたゆうと)さんもそのひとり。8歳からサッカーを習い始め、周囲から『プロになれる』と称賛されるも、オファーが届く事はありませんでした。
目標を失い、大学卒業後は就職を選択。突きつけられた現実は”できない”自分。
現在は営業本部として、メインの新規開拓の営業マネージャーを務める傍ら、サッカークラブFC94の選手兼運営メンバー。2020年内にはMurbany(マーバニー)株式会社の代表取締役としてオーダーシャツ事業を展開予定。
現在に至るまでどんな道のりだったのでしょうか―――?
サッカー選手を目指して
――小・中とナショナル選抜に選出。非常に上手い選手だったんでしょうね!
山下:今となっては過去の栄光です…(笑)。始めたきっかけは友人からの誘いでした。
中学、高校と三菱養和に通っていました。放課後は練習に行き、授業中は疲れで寝ているか、サッカーのことを考えているか。
正直、全く勉強はしてきませんでした(笑)
国士舘大学サッカー部で4年間プレーしたんですけど、どのクラブからも声はかかることなく、プロサッカー選手を諦めました。
シンプルに実力不足だった、としか言いようがありません。
山下さん最前列の一番右。同列左から3番目には日本代表の中島翔哉選手。
諦めきれない
――就職活動ではなにか軸はありましたか?
山下:働きたい業界とかはありませんでしたね…(笑)。就活中もプロサッカー選手を諦めきれない自分がいました。
最終面接でも『海外でサッカーを続けるかも知れません…』みたいなことも言っちゃってましたね(笑)
でも、そんな僕に対して新卒で入社した人事の方から『君の性格はうちに合っている』と仰って頂いて、電力会社ベンチャーに就職しました。
【PROFILE】
山下由都(やましたゆうと)。1994年生まれ/東京都出身
小学校3年生からサッカーを始める。(中・高、三菱養和サッカークラブ)板橋有徳高校→国士舘大学、政治経済学部。電力会社ベンチャー→プルデンシャル生命→2020年4月人材コンサルのベンチャー企業。Murbany株式会社(小会社の代表)として、2020年11月中旬からオーダーシャツ事業を開始。94年生まれで構成されるサッカークラブ”FC94”選手兼運営メンバー。
砂時計と睨めっこ
――サッカー生活とは一変し、数字に追われる営業職。当時の心境、働き方はいかがでしたか?
山下:当時、燃え尽き症候群ぽくなっていました。突然、社会の海にポンッと投げ出されたら『えっ?なにを目指せば良いの?』となってしまった。
新卒で入社した当初はすごい馬鹿にされましたね。
今でも鮮明に覚えているのは、最初の3分間スピーチでの出来事です。全社員の前に立って話すのですが、僕は砂時計で時間を計っていました。
いざ前に立って1分も話したら、あまりの緊張と準備不足のためか、突如頭が真っ白に…。
そのあとはもう地獄で…。2分間黙り込んだんです。
砂時計を眺めながら『とにかく早く終わってくれ!!!』と祈るばかりでした…(笑)
周囲に笑われて始まった社会人生活
――そういう経験は僕もありますけど、冷や汗は出るし、時間も長く感じますよね…。
山下:まさにそうでした…(笑)。先輩方がクスクスと笑っているんですよね。そんな中、視線も感じながらただ耐える。
社会人になっていきなりの屈辱を味わいました。
それまで、サッカーであまり笑われることはなかったですが、まだ名前も顔も覚えていない先輩から笑われるのは屈辱でしかなかった。
僕の社会人生活はそこからのスタートでした。
当時、営業成績は最下位。先輩から『頑張れ!』と言われ、その時は悔しい想いがあっても、自然と消えてしまっている。人生の目標も無いので、自ずと結果も出ず『なんのために仕事しているのかな?』と考えていました。
心に火が付く瞬間。そして、売上1位へ
――ですが、ある出会いをきっかけに売上件数1位を獲得されるんですよね…!?どういう心境の変化が…?
山下:そういった状況でも価値観を広げるために、色々な人と会うことだけはしてました。
そんなある日、自分と同い年の男性にお会いしました。当時ディーラーに勤め、全国で売上げ2位の方でした。
同じサッカー経験者でもあったんですが、輝かしい姿を見てめちゃめちゃ悔しくなりましたね。
それと同時に、『このままだと俺は終わる…』と焦りを感じ、奮起しました。完全に心に火が付いた瞬間ですよね。
それ以降は早めに出社し、新聞を読み、スケジュール確認と商談の流れを再チェック。売れている先輩営業マンの完コピなど…。
周りの協力もあって獲得できました。
テレビに映るプロサッカー選手になった友人達
――2年半勤め、プルデンシャルに転職。なぜ、完全歩合の世界を選ばれたのでしょうか?
山下:理由はふたつあって、ひとつは給与面でした。
今思うと生意気な考えなんですが、売上げ1位を獲得しても、最下位の頃と給料はあまり変わらなかったんです。
『結果を出したのになぜだろう?』と不思議に思っていました。ならば、自分の実力で評価される世界に行こうと自分の可能性を信じて飛び込みました。
もうひとつはプロサッカー選手になれなかった悔しさです。
テレビを点けると過去に一緒にプレーしていた仲間や、対戦相手がピッチで輝いている。めちゃくちゃかっこいいじゃないですか…(笑)。
『羨ましいな』と想う純粋な気持ちと一方で、心の奥底でずっと『負けたくない』と思っていたんです。
プロのサッカー選手は毎日チームメイトと共にしのぎを削り合う。生きるか死ぬかの世界。
自分はビジネスの世界で彼らと同じようにプロ意識を持って、戦いたかったんです。
18番を着用するのが山下さん
ボロボロになったメンタル
――自ら厳しい戦いの場に勝負を挑まれました。その後はどのようなものでしたか?
山下:入社後ご契約を頂いていました。ですが、連日夜遅くに帰宅。そこから勉強して就寝。個人事業主だったため、交通費や商談の費用も個人負担。気付いたら、お金も無くなっていました。
当時、上司の方に相談したら『実家に戻って仕事したらどう?』と提案されたんです。でも、良い選択とわかりながらも、その一歩が出なかったんです。
この時、グッと精神的に落ち込みました。
僕の性格上、イメージができ、確信を持てれば行動に移すんです。でも、そこで動けなかった。
その時、『自分はここまでだな。と、終わったんだな』と思いました。
結果8か月で退職。人から嫌われ、まわりには変な口コミも広がりました。1か月は人と会うことを拒むようになりました。
FC94運営メンバー(写真:左から2番目が山下さん)
嘘は自分さえも否定する
――その頃から”正々堂々”を志したかと思います。その点を詳しく紐解きたいです。
山下:ご契約をお預かりしていたお客様には本当に申し訳なかったのですが、『僕が一生担当になります』とお伝えしていました。
初めから『嘘をつこう』と思っていたわけではないんですが、結果として僕は辞めてしまった。つまり、できない嘘をついてしまったんです。そんな自分が嫌いになりました。
部屋で籠る間、自分の性格に合っている言葉、明確な信念が欲しかった。
自己分析して辿り着いたのが”正々堂々”という言葉。自分は不器用で、嘘はつけない。そして、真っすぐな性格。自分に一番合うなと思ったんです。
この経験は人としての在り方や生き方を再認識させられました。小手先のテクニックではなく、等身大の自分で勝負しようと。
どん底に落ちようと必ず軌道に乗らせる
――ですが、そういった精神状態からの再起となると、その一歩は重いと思います…。
山下:高橋さん、僕は諦めが悪いんです。
なにより、サッカー選手にもなれず、覚悟を持ったはずの完全歩合の世界でもぶちのめされた。
『このままの自分で終わりたくない』っていうのが自分を支えました。
今思い出すと、高校時代に大きな怪我をして、そのまま選手生活を終えるのか、もう一度踏ん張ってスタメンに戻るのか。
そんな、岐路に立ったこともありましたが、辞めることはありませんでした。
理想の自分へ
――”時間を大切にしたい”という観点から、現在の会社に勤められたそうですね。
山下:弊社、代表取締役は小・中・大と同じ友人でもあります。それに+α、週休3日相当、スーパーフレックス、テレワークという自分の求める環境でした。
新規事業として以前から興味があったオーダーシャツ。加えてFC94の選手/運営メンバーにも携われるなど、”営業×サッカークラブ運営×オーダーシャツ”。
今は理想の生き方と働き方ができ、とても充実しています!
最近では同世代の方から人生相談を受けることもあります。その中には、中々チャレンジの一歩が踏み出せない、怖いと思ってしまう人たちも多くいます。
そういった方たちに挑戦に恐れず、チャレンジの一歩を踏み出してもらいたいです。オーダーシャツ事業もこういった想いが含まれています。
”失敗”も”成功”も全て自分
――今の強みは、正々堂々と物事と向き合うことかも知れませんね!最後に今後の目標をお聞かせください!
山下:僕は人との会話が好きなのですが、その際、心に情熱という火を付けたい。という想いも抱いています。
僕の経歴や過去を見ると、『すごい人』と思われがちですが、そんなことはありません。
夢敗れ、人前に立っても話せず、営業成績も最下位を経験したことがある。覚悟を持って臨んだチャレンジも結果として敗れた。
自分を誇れず、自分を嫌いになった過去があるからこそ、”正々堂々と在りたい自分”にフォーカスしました。この言葉を胸に、これからを生きていこうと思います!
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