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覚悟と挑戦の先に見えた景色――アスリート×経営者 長田豪史

写真:一列目の中央青いTシャツを着るのが長田さん

 

 アスリートのひとつの目標であり、狭き門の”プロ選手”。

 

 トレイルランナーの長田豪史(おさだごうし)さんは28歳と若手選手でありながら、国内外の主要レースで数々のタイトルを獲得する日本屈指のトップランナー。

 

 20代前半でキャリアをスタート。現在は日本で"唯一"個人主催のトレランイベントのみで生計を立て、成功を収めている。

 

 今回は3年ぶりのインタビュー。どんなレースを走り抜け、どんな選手に変貌したのか。これまでの舞台裏をお聞きしました――。

 

長田豪史(おさだごうし)1994年7月15日/東京都出身。小学生時、陸上クラブチームに所属。中学、高校と陸上に励む。東京国際大学に入学。大学3年生からトレイルランニングを始める。その後、国内外のトレイルランニングの大会に出場。『フォルモサウルトラトレイル』65㎞,104㎞優勝。『OSJ新城』64㎞優勝。現在はレース出場とイベント開催を行う。写真提供:Shigeto Osumi

 

前人未到の記録

――お久しぶりです!現在もレース出場はもちろん、大人気イベントを主催されているようですね!

 

長田 お久しぶりです!あれから激動の時間を過ごしてきました(笑)

 

 2019年11月、台湾で開催された『フォルモサウルトラトレイル(104km)』では日本のトップ選手も出場する中、大会新記録で優勝しました。

 

 今まで100㎞以上のトレイルレースで20代の選手が優勝することがなかったため、”世代交代”や”ウルトラトレイルの新星”など、記事になる事もあり大きな反響がありました。

 

フォルモサウルトラトレイルを大会新記録で優勝。日本のトレイル界の新たな扉を開いた

 

時は来た

――更なる局面を迎えたのが欧州ビックイベントのひとつ『トランスグランカナリア(260㎞)』の出場。数日に渡ってテレビ放送やライブ配信も行われるなど、注目度も桁違いの大会です。

 

長田 『世界で活躍する山岳アスリートになる』と言ってきましたが、いよいよその瞬間を迎えました。

 

 そして、優勝すればずっと目指していたプロトレイルランナーになれる気がしていました。スポンサーがつくのか。イベント開催で生計を立てるのか。明確な何かがあったわけではない。それでも、新たな事を始められる妙な確信がありました。

 

 無難な結果で終わらせず、人生イチの走りをすることを胸にレースへ臨みました。

 

――強い信念を持ち挑んだ同大会。118㎞から先頭を走り、優勝争いをすることになりました!

 

長田 『フォルモサウルトラトレイル』よりも総距離は倍。ビックネームの選手も多数出場。その状況下で自分は楔を打ち込んだと言えたかもしれません。

 

 ヨーロッパの人たちに多くの注目を浴びたのはこの時が初めてでした。技術面・精神面でも次なるステップへといったと言えます。

 

 それまではある種”強がり”や”希望”から『優勝が目標です』と言っていましたが、この大会を通して、優勝は絶対必須の条件となりました。

 

 そして、このレースでの経験がコロナ禍でのチャレンジを後押し、現在へと繋がったんです。

 

同大会で優勝争いをしたルカ・パピ(イタリア)写真提供:Ichiro Hashizume

ライバルたちのチャレンジ

――そのチャレンジが『木ぐるぐる100マイル』、『階段エベレスト』、『階段富士山3往復』。SNS上では拝見していましたが、衝撃的な企画でした(笑)

 

長田 自粛期間のある日、スマホを眺めていたら世界各国の選手たちが自宅でもできる様々な企画をSNS上にアップしていました。

 

 その中のひとりに『トランスグランカナリア』で共に優勝争いをしたルカ・パピ(イタリア)が自宅で110㎞を走る様子をアップしていました。

 

 企画の面白さに度肝を抜かれたと同時に、自分もそのクレイジーさに負けたくないなと思いました(笑)

 

 一見するとこの3つはトレーニングにも見えると思いますが、ひとつのチャレンジと位置づけていました。

 

 個人開催でありながら、公式大会時と同様に企画内容や趣旨、意気込みなどをSNSで発信。自分自身で立ち上げたことを成せるか否か。その過程も含めて世界に届けたかったんです。

 

「『木ぐるぐる100マイル(160km)』はゴールに40時間を有するのは想像できました。この距離数に挑めたのもトランスグランカナリアの経験があったからこそでした」

 

成功期待感

――企画が反響を呼び『木ぐるぐる2時間耐久レース』を開催。こちらは一般の方たちが参加され、現在に至る個人主催イベントの第一歩となりました。

 

長田 参加者様の反応を受けて、イベントの種類の増加、コンセプトやデザイン。細部を構築することで継続的に行っていけると感じました。

 

 まず、着手したのは市場調査。トレイルランナーにどんなニーズが内在しているのか。そして、自分自身が心躍った大会を遡り、どんなプロモーションがあったのか。

 

  自分の経験も振り返りながら辿り着いたのが”トレラン練習会”、”技術講習会”、”ツアーイベント”でした。

 


www.youtube.com

「個人主催のトレランイベント一本で生計を立ててる人はいませんでした。だからこそ、根幹となるコンセプトづくりは大事でした」動画はイベント時の様子。映像提供:RUNNET channel

 

3つの柱

――いよいよ、今回のインタビューの肝となる部分です。こちらは具体的にどのように構成されているのでしょうか?

 

長田 『基礎能力向上を目的とし、毎月ご参加できる”練習会”』

   『上り下りやフォームの指導、ポールワークなどの技術面を学べる”講習会”』

   『40㎞~80㎞の距離をゴール目指して進む”ツアーイベント”』

 

 この3つのイベントから”トレランイベント”は形成されています。

 

 月5回の開催で各イベント毎回定員25名~75名の申込制。参加者様同士の交流が広がると感じました。その効果も相まってか2021年からは主催した90回以上のイベントは全て満員を頂いています。(2022年8月現在)

 

――練習会には様々なレベルの方がいらっしゃると思います。その差をどのようにカバーされているのでしょうか?

 

長田 ひとつの練習会の中で初級・中級・上級に分かれ、その各級の中で5段階のレベルに振り分けていて、ウェーブスタートなどにして調整しています。

 

 そこまで細分化した背景には、一番遅くにゴールしたとき『待たせてしまって申し訳ない…』って思ったことありませんか?そうしたときでも、誰一人孤立することない環境にしたかったんですね。仮に最下位であっても称え合って迎え入れたり。

 

 速くてもゆっくりだとしても、一人ひとりの走りが輝くような雰囲気づくりを目指しています。

 

――自分のレベルに合うところを選べ、その中でも受け入れてもらえる環境がある。気軽に参加しやすい設計だなと感じます!

 

長田 上達具合、体調面を加味してレベルを選択できる。レース前だからグループを一つ落としたり、挑戦するためにより速いグループを選択することもできる。

 

 普段一人で練習していると自分の課題発見やその対策練習をすること。効率の良い練習を行うのは中々大変だと思うんですよね。

 

 それらを仲間と共に練習会で高め合い、そこで見つけた技術的な課題もメンバーと一緒に講習会で学べるように設計しました。

 

技術講習会にて

――そして、ひとつの挑戦とも言える”ツアーイベント”。40㎞~80㎞の距離を長田さん自身がペースメーカーとなって引っ張っていく内容となっています。

 

長田  参加者の方々が目標を見つける瞬間。ひとつの挑戦として。そして、トレラン練習会のコミュニティ形成において外せないイベントです。

 

 完走した参加者様はよりイキイキした表情になるのが見て取れます。なにより『日々の練習を詰んだことで私は成し遂げた』と思えることは何にも代えがたい。

 

 仲間が疾走する姿やゴールする姿を自分事のように喜ぶ方も多いんです。それに呼応するように『私も頑張ろう!』とさらに練習に励む人もいます。

 

 この3つのイベントが上手く絡み合うことで更なる相乗効果が生まれています。

 

ツアーイベントスタート、ゴール時。紙吹雪が舞う中、みんなが迎え入れる。

満足度を高める

――決して輝かしい実績のみで現在があるわけでないんですね。イベント開催の背景には緻密なアイデアや施策がちりばめられています。

 

長田 実績や体制が整っていれば多くの方にご参加頂き、満足頂けるわけでないと思っています。

 

 私自身が一番大切だと思うのはご参加頂く方への感謝の気持ち、そしてどれだけ楽しんで、ご満足いただけるかへの拘り。

 

 そのひとつとして、イベント当日だけではなく、イベントの前も後も楽しんで頂けるよう写真等を駆使して1年中イベントを盛り上げるような工夫もしています。

 

大学時代から写真に興味があったという長田さん。自ら、イベント写真を撮影。

 

それぞれの目標に

――トレランイベントはどのような目標や指針を掲げているのでしょうか?

 

長田 コンセプトは一人ひとりがそれぞれの目標に向かっていける場所。皆さん、自分の目標達成を掲げています。

 

 上級クラスに行きたい人、より次のレベルにステップアップしたい人、タイムを早くしたい人など様々です。

 

 私自身、その都度憧れや目標に突き進んで今がある。”誰から”提示されたモノではなく”自ら”の内側に芽生えた高みを目指す。

 

 この根幹があるからこそ、バラバラになることなく、互いに切磋琢磨していける環境が積みあがってきました。これも参加者様が継続的にお越しくださる理由のひとつでもあります。

 

イベント中は参加者の笑顔が溢れている

 

主催者であり、プレーヤー

――今はイベントの企画運営に加えて、ご自身の練習やレース出場もあります。その両立はいかがでしょうか?

 

長田 練習が疎かになることはありません。むしろ競技力は上がったと感じています。

 

 2年前から160㎞以上のレースにターゲットに絞り練習を積んできましたが、個人イベント開催以降、練習ができなかったことは一度もありません。

 

 大会に出場すると毎回すごい応援をくださいます。そこで結果を出せば練習会も盛り上がる。イベントも自分のレース双方を大事にしています。

 

『1イベントあたり200枚程度撮影しています。データは当日に加工し、お渡ししています。もちろん、写真にも強いこだわりを持っています!』

 

覚悟を持った選択

――大舞台で結果を納め、目に見えて変わったこともあれば当時の熱さも持ち続けている長田さん。非常にお会いできてうれしかったです!

 

長田 トレイルランニングのイベントで生計を立てる。3年前は到底無理だと思っていました。沢山の方のご協力があったからこそ活動できているのは言うまでもありません。

 

 ただ、こうして振り返ると初レースからひとつひとつのレースに全力で挑んできた。その連続の中で大舞台を迎え結果を残して今がある。

 

 すべては覚悟。覚悟そのものだと思います。

 

 もちろん、その挑戦には失敗をすることもあります。けれど、それも含めて一つの挑戦であることを真に受け入れる。

 

 正直、レースに勝って満足というのはありません。『世界で活躍する山岳アスリートになる』という目標に向けて、更に高みを目指し、イベントも更に良い物になるよう頑張りたいと思っています。

 

 

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