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『あなたの人生を記録する』

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いじめ、挫折、メンタル不調。いつも側には誰かがいた 山本恵理子(27) 営業

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人に勝つことよりも

 人との争い事が苦手な内気な少女。水泳教室に通っていた彼女は選手コースへの打診もあったが、人と競争することに意欲が湧かなかった。「それよりも綺麗にうまく泳げれば良い。数字で速さを競うことに興味を持てなかった」

 小学生の時には2回の転校。どの学校でもいじめを受けた。

 「入学早々からいじめに合うこともあった。明確な理由はわからないけど、音楽の授業の時に、円になって座ったときに正面にいた男の子から『お前の前かよ。目障りなんだよ』と言われて泣いてしまった」

 

目の前で捨てられた気持ち

 小学校6年生のときには、好きだった男の子にバレンタインのチョコを渡した際、「こんなもんいらねーよ」と言われ、その場で捨てられた。

 実は彼女の転校当初から仲良かった子が、わざとそうするように男の子に頼んでいたとクラスの子が教えてくれた。

 「その子から、『ずっと黙っていたけど、じつは私もその一員として加担していた。ごめんね。』と謝ってくれたが、それ以降人を信用することが難しくなっていった。」 

 

 

「あまり話さなかったね」

 中学校はまた新しい環境で送ることになった。「自分が仲良くしていきたいと思った人に対しては、私の性格、しぐさや言い方が嫌だな。と思うことがあったら正直に伝えてほしい」と告げた。

 1年生の時こそ、周囲と話す方だったが、次第に内に籠るようになっていった。校内では話すも、土日休みに顔を合わせると軽い挨拶程度になった。

 卒業アルバムのメッセージ欄には、隣の席の男の子から「ずっと席が隣だったけど、あんまり話さなかったね」と書いてあった。

 「それを見た時に悲しくなっちゃって。なんか虚しいなと。無視したかったわけじゃない。当時の自分は単純に傷つきたくなかっただけだった」

 

 

離れ小島になってほしくない

 高校時代もいじめのような事もあったが、自身の考え方も成長。

 「人間関係で傷ついたとしても、自分を理解してくれる人がいてくれればそれで良いんだ。そう思えるようになった」

 中学、高校と吹奏楽部に入部。フルートを演奏。人間関係に悩んでいた彼女だが、元来は人好き。部活内ではルールなどの決め事する際には中心となって動いた。

 「小さいときから正しいことがしたいと思っていた。小、中学校もいじめられていたけど、誰かが離れ小島になっているのは嫌だった。部活でもそういう子が居ないように、周囲のメンバーの考えを組みとり、皆が思っているモヤモヤのようなものを代弁していた」

 

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高校の学園祭での一コマ

 

 

世の中の仕組み、物事の成り立ちを知りたい

 英語が得意だったこともあり、中学時代から英語の先生になりたかった。そこには教科を教えることだけでなく、生徒を成長させたい思いもあった。

 「自分は家族や友達がいたからいじめられても、命を落とすことはなかった。でも、ニュースなどを目にすると、いじめをきっかけに不登校や自殺をしてしまう生徒を目にするようになった。そういう状況を過ごす生徒に対して、生きる力を引き出せる教師になりたいと思った」

 高校卒業後、浪人生活の中で教師の仕事内容を調べてみると、理想とは違う一面を知った。

 「生徒ひとりひとりと密に接することよりも、実際は日々の業務に追われる事を知った。更には、学校内の先生間での派閥のようなものが存在しているなど、大人になってもそういう環境に身を置く事は嫌だと思った。その一方で、調べていく中で私は教師という仕事内容だけでなく、世の中の事や社会の成り立ちを知らないんだなと感じた」

 

  

とにかく人と出会う

 心機一転、社会のメカニズムや現代社会についてを総合的に知りたいと思い、明治学院大学、社会学部に入学。 更に、自分のやりたいことを見つけられるように『色々な人と出会う』というテーマを設けた。

 1年生時は、学校のボランティアセンターを介し大学周辺住民の人達と地域活動。学部内の生徒会にも所属し、イベント主催、論文の講演会のサポートも手がけた。

 特に思い入れが強かったのは、学生団体の運営だった。

 「学内の使わなくなった教科書を一度使用しただけで、それ以降使わないのはもったいないと思った。その時に、『それなら学校で売ればいいじゃん!』と思いついた時、その団体を見つけた」

 

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 国内の各大学に支部を設け、学生主導で活動している団体。それまで、大学内に支部がなかったため、彼女が大学内に支部を設立。メンバー集めから始まり、その後は実際に売る場所を選定。販売までこぎ着け、売り上げ予算も達成した。

 自身が先頭に立ち2年生から3年生の間、チーム作りや文化祭に出店など多くのことに奔走した。

 「支部を立ち上げ、販売からその後の活動も本当にメンバーに助けられながら様々な活動をすることができた。自分の定めたテーマに即して時間を過ごすことができた」

 

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当時の活動が評価され、新聞にも掲載された

 

 

彼女にとっての仕事のやりがい

 就職活動がスタート。就活をしていると徐々に就活そのものに疑問を抱くようになった。

 「就職一括採用という仕組み、WEBエントリーに遅れるだけで会社を受けることができない。そういったルールや規制が多い事に対して違和感を覚えた。ならば、採用というところに特化した人材系の会社に行こうと思った」

  卒業後は人材派遣会社に入社。主な仕事内容は、営業として、企業と派遣社員との橋渡しを担った。入社一年目は我武者羅に働いたと振り返る。

 「仕事自体は楽しかった。企業と紹介する人の相性やマッチング。サービスを導入したことによる業務改善など、利益や数字だけじゃなく働く人と企業間同士の関係構築の部分を大事にしていた」

 

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イギリスの短期留学時。老人ホームでボランティア活動も行った

 

 

4か月間の休職

 しかし、自身が抱く働き方の姿勢と、会社の方向性のギャップを感じるようになった。いつのまにか、精神的にも疲弊し4か月間休職することになった。

 休んでいる間、考えることは仕事についてだった。

 「仕事は働いてお金を得るだけでなく、誰かに自分のした仕事を喜んでもらえる。人によって仕事の喜びは違うけど、やりがいを見つける場所でもある。それなのに、モチベーションややりがいを奪われる人も多くいる。将来的には、そういったことを無くせる仕事がしたいなと思った」

 

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大学時代には外部の音楽団にて活動。今も趣味のひとつとして演奏をしている


 

ITが持つ力を感じる

 その後、退職。体の不調を感じた時期から転職活動をしており、自身のメンタル不調を理解してくれた方が勤める人材組織コンサルティング会社で働いた。

 まだ完全に回復したわけではなく、体調が不安定で休むこともあった。それでもずっと見守ってくれた社員の方々、何よりもマーケティング部の上司、メンバーには感謝しても仕切れないという。

 「精神的な調子の波が定期的に訪れて、時折休むこともあったけどとても親切に寄り添ってくれた。その会社で働く中で、人材会社にいたこともあり、人の能力や素質の重要性を実感していたけど、ITの力も今後は様々な分野で必要だと知った」

 そんな時、学生時代の友人がテックキャンプというプログラミング教室に誘ってくれた。それに参加した際に、トークノートという職場からオファーをもらい、去年から働いている。

 

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東北ボランティアにも参加。名産品を笑顔で頬張る!

 

ひとりひとりが前向きな行動を取れる

 サービスは主に企業向け社内SNSツールの導入。投稿や個々のメッセージ数などを解析。それらの情報を元にアウトプットを行い、上司が部下に対し、気軽に話しかけたり、業務改善を促進させるる仕組みになっている。

 ネットだけではなく、リアルに社員同士が繋がれるツールだ。その中で、現在はマーケティングとして様々な企業に自社のサービスの販売を行っている。

 「このサービスを知った時に、すごい惹かれた。このプロダクトが広まっていけば、仕事で意欲を失っている人も前向き行動を取れるんじゃないかなって。さらに、オープンなコミュニケーションをとることで話しかけやすさ、社内の風通しの良さも作ることができる」

 

 

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社内の雰囲気もよく充実した日々を送れているそうだ。2019年日本企業、「働きがいのある会社」ランキングでは小規模部門20位にもランクイン

 

 
hatarakigai.info

 

さいごー今日、誰の顔を思い浮かべましたか?

 いじめに苦しむこともあったが、それらを乗り越え現在は人と人を結びつける仕事をしている。

 「決してひとりじゃない」子どもに限らず、大人でも会社のパワハラなどをきっかけに自殺が絶えない昨今。最後に生きる糧となるような話をしてくた。

 「ひとりじゃない。と伝えたい。居場所が無いと感じている人、置かれている状況も様々。でも、自分が気付かないところで誰かが自分を想ってくれている。家族や親戚、小学校の同級生。もしかしたら、自分が住んでいるマンションの清掃員の人だったり。それは自分には目に見えないことだけど、実際そういうこともありえる」

 成長するにつれ、自分のいる環境は絶えず変化する。そこで人間関係に悩むこともあるだろう。生きていることが辛い。なにをしていても楽しくない。そんな時こそ、昔の楽しかった出来事を思い返してほしい。その時、もしかしたら誰かがあなたのことを想っているかも知れない。

 

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