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創業30年のタイ料理レストラン「サワディー」―――3代目が受け継ぐ道のり ロージンテンアヌワット(28)飲食店

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受け継ぐ覚悟

 西武新宿線久米川駅から徒歩5分にある、タイ料理レストラン「サワディー」。オープンから30年が経ち、祖父と母が切り盛りしてきたお店を継いだのは息子であるアヌワットさんだ。

 

 2019年6月から引き継ぎ、経営者としてお店を任せられるのか「試験期間中」とのこと。

 

 日夜、新しいレシピの研究に加え、フェスや花見大会への出店と忙しい日々を送る。

 

 「家族経営とは言え、タダでお店を譲ってもらうという考えは最初からありませんでした。まずはお店を買い取り、今は奥さんと営業しています。これからがスタートです」 

 

サワディー 久米川店 - 久米川/タイ料理 [食べログ]

 

ボクシングをはじめる

――日本に来たのは小学校5年生の時。来日当初は日本語など、適応するのは困難でしたか?

 

アヌワット 今でこそタイの友人から「日本人みたいなタイ語を話すようになったな」と言われるようになりましたが、当時は読み書きが苦手でした。

 

 ただ、振り返ってみると、"うまく日本語を話せないから”、”外国人だから”といじめに合うことは一度もなかったです。

 

 むしろ、優しい日本人に囲まれて育ちました。高校からは友人にボクシングは誘われたので、ノリではじめました(笑)

 

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お店はビルの2F。派手な装飾が目を引く階段

 

生活をかけて挑む人たち

――東京国際大学に進学。アメリカ留学を夢見るも、費用が高く断念。なにかに打ち込もうと、本格的にボクシングに取り組んだそうですね!

 

アヌワット 1年も経たずにプロテストに合格しました(笑)。戦績は4戦2勝2敗で引退。4戦目の相手は本当に強く、本気で人生をかけてやっている人はレベルが違うなと実感しましたね。

 

   それ以外にも大学の手話サークルで活動したり、2年生のときにはタイに一時帰国し、1か月間お寺に出家。いろんな経験をした大学生時代でした。

  
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半年間の入隊生活

――大学卒業後はタイの軍隊に入隊。なぜ、その選択をされたのでしょうか?

 

アヌワット ボクシングをやっていたので、どれぐらい過酷なのか試してみたかったのと、人生一回ですし経験してみよう!と思い志願しました。

 

 半年間の生活では、最初の3か月間はトレーニング。残り3月間は料理班を担当しました。

 

 元々、小さい時から家の手伝いをしていたため簡単な調理ならできるのではと思って決めました。もちろん、この時はまさかお店を継ぐ事は想像していませんでした(笑)


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このままで良いのか

――その後は、タイ国内でフリーランスの日本語通訳の仕事に就かれました。すると、大手食品メーカーから正社員のオファーが。ですが断られたそうですね?

 

アヌワット とても光栄なお誘いだったんですがお断りしました。というのも、タイは良くも悪くも”マイペース”な風土。その反面、『このままタイにいたら日本に戻って仕事できないぞ』と、どこか危機感にも似た感情が芽生えました。

 

右往左往した営業時代

――新たな環境を求め、タイの人材企業の紹介で日本のアパレル会社に就職。洋服の内側にあるケアラベルやボタン、製品タグなどを扱う企業で営業職として採用されました。

 

アヌワット 本来、1年間日本で就業したらタイに帰国するのがルールだったんですが、それでは短すぎると思い『3年間勤務させてください』ともお伝えし採用を頂きました。

 

 当時、外国人採用は営業職で僕ひとり。しかも、配属されたのは売上1位の営業所でした。特に議事録の作成が大変でしたね。話すのは得意でも、漢字が苦手で…(笑)

 

 でも、周囲のサポートもあり1年後には、なんとかできるようになりました。内心、入社当時は「いつタイに帰されるのか」とヒヤヒヤしていました(笑)

 

小さい頃の夢

――仕事も板についた入社4年目。突如として「お店を閉めようと思う」と告げられたそうですね。

 

アヌワット 創業者である祖父に「お店を継ぎたいか?」と尋ねられました

 

 話をもらった瞬間、『おじいちゃんとおばあちゃんが作ってきたものを残したい』という想いが一番強かったです。もちろん、母に対する恩返しも。気づいたら「やりたいです」とその場で答えいました。

 

 僕は忘れていたんですが、子供のころの将来の夢が『自分のレストランを持つ』ことだったと、最近母から聞きました。

 

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店内は木目調の落ち着いた雰囲気

 

「わたしも一緒に手伝うよ」

――当時、お付き合いしていたウァイさんに相談。(現在の奥様)すると、「わたしも一緒に手伝うよ」とタイでの仕事を辞めて日本での生活をスタートされました!

 

アヌワット 僕よりも早く退職して日本の飲食店でノウハウを知る為にアルバイトもしてくれたんです。奥さん、とっても頑張り屋さんなんです。こう話すと、ちょっと恥ずかしいですけど…(笑)。でも、いつも本当に感謝しています。

 

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 ふたりは今年1月にタイで結婚式を挙げ、4年弱勤めた会社を退職。夫婦二人三脚でお店を6月からスタートさせた。

 

改善点を探す

――経営困難の状況の中、まず最初に着手したことはなんでしたか?

 

アヌワット レシピの作製から始まりました。それまではレシピが無く、コックさんも日によって違うため、その都度味も変わってしまう。結果、常連さんが離れる。というサイクル。そこから一新しようと動き始めました。

 

 現在は、 奥さんとお義母さんが主に店舗運営を担当していて、お義母さんはタイで料理人の経験もあるので、昔ながらの味が楽しめます!

 

  その傍ら、僕は平日、休日問わずフェスや県内外のお祭りへの出店をしています。


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常に学び、変えていく

――レシピの改良など効果もあり、徐々に売り上げも回復しているようですね!

 

アヌワット 皆様のおかげでランチ時も盛況しています!ですが、自分がいる環境だけを知って満足するのは危ないと思っています

 

 今後はほかの飲食店にもアルバイトや、隙間時間を作ってまったく違った業種を覗いてみるなど、様々なノウハウを吸収したいです。

 

 なるべく、一日を充実させたいので、早朝はジムに通いその後は読書。数年前までは新聞も読めませんでしたが、今では小説はもちろん、週1冊は本を読み心身共に鍛えています!

 

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訪れていない人生のKO

――ここまでお話を伺うと大きなミスや失敗が無いように思います!やはり、事前準備や知識を補うことを普段から意識されているんですか?

 

アヌワット いや、たいした準備とかはしていませんよ(笑)。ただ、大きな失敗はまだありません。前職の同僚から『失敗が無いのが怖いよね』と言われていました。まさにその通りだなと。

 

 失敗があるからこそ、成功が生まれると思うんです。どこかで大きな失敗が訪れるんじゃないかと思っています。

 

 僕はパンチをもらい、そこから立ち上がれず、大学卒業を考えてプロボクサーを引退しました。その判断を間違ったとは今も思いませんが、現役続行していれば違った成功に繋がったのかなと思ったりします。

 

 

成功に導く

――現在は試用期間とのことですが、今後も経営者として数字の部分は重要になってくると思います!その点も踏まえ、今後の目標をお聞かせください!

 

アヌワット 初年度なので売上が上がるのは当然だと思っています。なので、来年が勝負の年。今は暇さえあれば、お店のこと考えています(笑)

 

 やるからには成功を目指していきます。ただ、昔から目標は持っても、”欲”は持っていませんでした。常に現状を良くすることが一番大事だと思っています。

 

  今の夢は50歳ぐらいになったら世界一周すること。祖父は70歳になるまで働き詰めでした。その姿を見ているので、もっといろんな人生を歩んでみたいと思います。

 

 もちろん、当分先の話ですが。(笑)そのためにも、お店を「持つ」だけじゃなく、「成功」に導く。今はまだそのスタートラインに立ったばかりです。

 


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