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子どもたちに伝えてきた”自由”の在り方と教育の未来―――『大人たちこそ”人生の主役は自分にある”と認識するべきでしょう』 井上敏(61)一般社団法人 教育の未来プロジェクト 代表


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 昨年、38年間の教師生活を終え、一般社団法人『教育の未来プロジェクト』を立ち上げた井上敏(いのうえびん)さんにお会いした。

 

 「私の人生テーマのひとつに”自由”があります。教育現場は昭和を終え、平成の30年間で自由教育から管理教育へと変化していきました。私がセミナーを通して、先生方にお伝えているのは、管理教育下における規則やルールを尊重しながらも、個人の自由な発想を持って物事の解決をしてみませんか?というような、現場から始まる新たなアクションを促せたらと思っています」
 
 井上さんが掲げる自由、そして教育に対する想いとは―――。


 

現在、『教育の未来プロジェクト』の運営に加え、非常講師としても従事。なぜ、教師を志したのでしょうか?


 「きっかけは意外なところからでした…。(笑)大学卒業後は、証券会社への内定が決まっていました。教育実習にも行ったんですが、教員を目指すつもりはなかったです。ただ、友人のお父様が私立高校を創設し、そのお父様が私の状況を知って『お前みたいなやつが学校現場には必要だ!是非うちの学校に来てほしい!』と誘って頂いたことがありました」

 

珍しいオファーでしたね!その後、どうされたんですか?

 

 「そこで、友人20人ぐらいに『教師を目指そうか迷っている』と、相談したんです。すると、全員が『やってみたら良いんじゃないか!』と言ったんです。きっと、学級委員長や部長など、リーダー的ポジションにいることが多かったので、そこを評価してくれたんでしょう。『これも天からの声なのかな?』と思い、教員を目指そうと決意した瞬間でした」

 

そこから続いた教員生活。教頭先生など、学校を統括するポジションにも就いたのでしょうか?


 「40代後半に教頭先生を打診されました。ですが、教頭先生の主な仕事というのは、事務作業や教員の方々のケアがメイン。つまり、子ども達と授業ができなくなるということ。それは自分がつまらない人間になると思い、ゾッとしたのを今でも覚えています」

 

 

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43歳の時にうつ病を発症。「1年間の休職は強烈な出来事でした。ただ、周囲の先生も疲弊している人が多く、救いになりたいと思いその後、カウンセリングの資格を取得しました。今も現役の先生方が抱く、悩みや葛藤を聞いています」

 

ゾッとしたとは、具体的にはどういうことでしょうか?

 

 「現場にいればこそ、毎日子どもと触れ合いなにかが起きる。教壇に立てば、『今日の授業は子供たちに受けなかった』、『自分の教える立ち位置が良くなかった』と
日々、点検をし改善していく。言うなれば、子どもという河の流れに自分自身が清められている日常。ただ、その河から出てしまったら、体も乾いてなんの刺激も無い日々になってしまう。それが非常に怖く感じてお断りしたんです」 
 

 

そういった刺激を求めて、現在も非常勤として現場で働いていらっしゃると。昨年、一般社団法人『教育の未来プロジェクト』その立ち上げの背景を伺いたいです!

 

 「定年を迎えるまでの4年間、若い先生たちの研修を行っていました。しかし、学校の研修は主体的というよりも受け身。なので、外部からのバイアスが一切掛からない、自由は発想を持ち発言できる場を作りたい。加えて教員はもちろん、保護者の方たちにも必要な情報を届けたいとも思いました。その根底には、社会貢献を優先しながら明るく健康でいたい。いわゆる、自分らしい生き方をしようと決意したのも大きかったです」

 

生徒たちと触れる際、なにかテーマや信念のようなものはお持ちでしたか?


 「学校は職場であり組織。ですが、子どもたちは『この先生、オトナなのにどこか自由だな』と感じ取ってほしかった。僕が中高生の時は、俺の人生は俺が決める!と、自ら進路を切り開きながらも、学校には依存しない。そんな生徒も多く存在していました。いわゆる自由教育と言えたでしょう。しかし、教師生活が始まり平成を迎えると学校組織全体、そして保護者も管理教育へと変化していきました
 

 

自由教育と管理教育、大きな違いがありそうですね…。

 「損得の世界へと切り替わりました。「どうすれば良い成績が取れるのか?」、「部活をすればより良い高校に行けるらしい」、「高校進学後も真面目に通って有名大学に進学すれば、安定した人生を送ることができる」―――。しかし、そういう環境に馴染めない子どももいるわけです。次第に、『俺の人生は俺のものだ!』という発想を持つ子は隅っこに追いやられ、いつしか生徒達は工業製品のようになってしまった。同じものを見、同じものを着、同じような人生を送る。それが幸せである。というのが平成の30年でできてしまった。なので、僕の根っこにある”自由”を無くさないように意識していました

 

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教育情報のセミナーを運営。その他、学校運営コンサルティング、カウンセリング、異業種親睦会の開催している

 

 

自由に生きる。現代社会において体現するのは中々難しいように感じます。

 

 「確かに、今は自由とかけ離れた教育環境や時代にあると思います。だからこそ、大人である僕たち自身が自由について今一度問いかける人生の主役は自分にあると認識しなければならない。そういったこともセミナーを通してお伝えしています。自由だからこそ難しい生き方がある。ただ、難しい生き方だからこそ、自分なりに追求してみない?と。こういった話は中々、中学生、高校生には伝わらないです。だからこそ、大人になってもう一度考えて、自分の人生を今一度見つめるべきだと」

 

セミナーに参加された教員の方々には、どのような変化や行動を期待していますか?

 「学校によって多種多様な問題や課題が存在します。なので、セミナーでの議題をご自身の学校でどう生かせるのかを考え、行動に移して欲しいです。もし、自分がその職場で発信する立場だと思ったのなら、声をあげてほしい。もしくは仲間を募って議論したり、共に行動を起こすのも良いかもしれません。セミナーに来たことで、何事もなかった日々が少しでも変化し、ちょっとでも心をがザワつく。そんな状態を作れれば良いなと。その変化を生み出すためにも、日頃から自分たちがいる職場や環境に良い意味で疑いを持つという思考も大事だと思っています」

 

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心がザワつく。非常に素敵な言葉です…。最後に今後の展望を教えてください!


 「職業、年齢、関係無く多くの人達と顔が見える交流も精力的に行っていきたいです。もちろん、取り上げたいテーマも数多くあります。ひとつ例を挙げると、去年は『表現者としての教員』というのを扱いました。学習指導要領をただ実践するのではなく、時に芸人のような楽しませる振る舞いというのも大事だとも思っています。ルールや規則も大事ですが、自由で良いんだよと。これからも僕が抱く”自由”。これを忘れることなく、多くの方々と共に教育の未来を築いていきたいと思っています」